中継無線

特定小電力無線機は、無線局開局申請や個人の免許・資格を取得するが必要なく、だれでも簡単に使える無線機です。ビジネスでの音声連絡通信だけでなく、データ伝送などにも使用されています。もちろん、用途が業務用に定められているわけではありませんので、レジャー用(スキー場などでの連絡用など)にも利用されています。

お買い求めになったその日から、だれでも簡単に使える手軽な無線機ですが、その分、簡易無線などに比べて制約もあります。
  • 無線機の出力が1mWまたは10mWに制限されていること
    トランシーバータイプの片側通話(単信方式またはシンプレックスといいます)の場合、見通し距離で200mくらいが通話エリアになります。
    同時通話型の双方向通信(複信方式またはデュプレックスといいます)の場合、やはり見通し距離で100mくらいが通話エリアになります。
  • 電波の連続発射に制限時間があること
    同時通話の1mWの出力タイプでは時間制限はありませんが、10mWの同時通話では3分間、同じくトランシーバータイプでは30秒の連続発射が続くと、無線機側で通話回線を閉じます(電波法施行規則第6条に規定する特定小電力無線局の標準規格に定められたもの)。


簡易無線機などに比べ、無線機の出力に劣るために通話エリアが狭くなってしまいます。しかし、通話エリアを拡大する方法が許可されています。それが中継通信です。

中継通信とは
無線機でおこなう通話は、自分の無線機のアンテナから発射された電波が、相手の無線機のアンテナに直接届くことによって会話が成立します。ただし、特定小電力無線では、この方法では見通し距離で200mくらいしか電波がとどきません。これをおぎなうのが中継装置です。
自分の無線機と、通話したい相手のいる場所では電波が届かず通話ができない場合に、2人の間に中継機を設置して電波を届くようにするのです。
野球にたとえて言えば、センターからのバックホームのボールをセカンドやショートが一度中継して、ホームベースへ送るようなイメージです。ダイレクトには届かない距離を、間に中継機(人)が入ることによって、届くようになるのです。

中継通信の応用例
特定小電力無線機は、本体とアンテナを分離することができません。したがって、基地(指令)局を設けてアンテナを高い位置にあげて広範囲をカバーする、ということができません。アンテナを高い位置にあげるには、本体そのものを高い位置に設置しなければならないからです。

それを解決したのが、単信用広域基地局通信システムです。これは中継機を、本来の中継機として使用するのではなく、電波をだすためのアンテナと無線機を一体型にしたものとして使用します。デスクトップの基地は、音声を送り出すだけの装置で無線部はありません。同軸ケーブルで接続され、基地とは離れた場所に設置されたアンテナ一体型無線機から電波が出され、携帯型の特定小電力無線機ではとどかない範囲をカバーできるようになっています。
単信(トランシーバー)方式の無線機が、基地として使われる場所から遠く離れた場所に赴任してはたらくことから、スタンダードでは「単信赴任」システムという愛称で呼んでいます。

中継通信の導入事例

競技場・遊園地・テーマパークなど
視界を大きくさえぎる建物がないけれど、場所が広くてダイレクトに電波が届きにくいのが屋外のレジャー施設です。中継機を設置する場所(高いところ)に恵まれていますので、広範囲をカバーできます。

工場・病院など
敷地内に建物が別棟としていくつもある場合、特定小電力無線だけでカバーするのは難しいケースあります。そんな場合は中継機を設置すれば問題も解決。しかも特定小電力無線は小さくて軽いので、いくつもの建物を移動するような場合でも携帯していて負担になりません。